文楽 吉田簑助 かわいい虚構たち
簑助さんが引退してから、2度目の春が過ぎていった。簑助さんが引退した2021年4月大阪公演『国性爺合戦』「楼門の段」の劇評は賛美の言葉で溢れ、過去の舞台もまた絶賛で埋め尽くされている。それ以前のことだが、『妹背山婦女庭訓』に簑助さんが雛鳥役で出演した際には、新聞に載った劇評のタイトルが「簑助の雛鳥 かわいさ圧倒的」だったのには、驚かされた。え!???!!!!...
View Article文楽 6月大阪鑑賞教室公演『五条橋』『仮名手本忠臣蔵』殿中刃傷の段、塩谷判官切腹の段、城明渡しの段 国立文楽劇場
文楽劇場の前で、集合してくる学生さんたちを待ち構えていた先生らしき小柄な女性が、高く掲げた扇子を振って、学生さんたちを招き寄せていた。うーん、熊谷より貫禄があるッ! ほんとに若者寄ってきてるし!! と思った。...
View Article文楽 大阪7・8月夏休み公演『かみなり太鼓』『西遊記』 国立文楽劇場
コロナ第9波の中での夏休み公演。8月頭の休演日に、急遽、以降4日間の公演中止が発表された。会期前半に休演者が続出していたから、許容人数を超えてしまったのか。当初発表された中止期間のみで公演再開ができたから良かったが、おじいちゃんが多い業種だし、どう対策していくのだろうか。■夏休み公演恒例、第一部、親子劇場。初心者向けをうたう鑑賞教室公演は「初心者」がほとんどいない場合がしばしばあるが、親子劇場は本当...
View Article文楽 大阪7・8月夏休み公演『妹背山婦女庭訓』四段目 国立文楽劇場
第二部、妹背山婦女庭訓、四段目。4月に上演された初段〜三段目の続き。通常は出ない「井戸替」、「鱶七使者(上使)」の口、「入鹿誅伐」を上演。...
View Article文楽 大阪7・8月夏休み公演『夏祭浪花鑑』国立文楽劇場
玉男さんが人間国宝に認定されることになった。本当によかった。この上なく嬉しい。記者会見で話されていたのが、「とにかく嬉しい」「すぐに勘十郎さんに連絡したら、『おめでとう、おめでとう……』と3回言ってくれた」*1、「(和生さん、勘十郎さんと)三人で文楽を盛り上げていきたい」という話題だったのが、とても、玉男様、って感じだった。玉男さんは、本当に幸せな人だと思う。■第三部、夏祭浪花鑑。玉男さんの団七は、...
View Article文楽 菅原伝授手習鑑 全段のあらすじと整理
文楽屈指の名作、『菅原伝授手習鑑』の全段あらすじまとめです。 INDEX┃ 概要┃ 人物相関図┃ 登場人物┃あらすじ初段大内の段 〜京都 禁中〜加茂堤の段 〜京都 加茂堤〜筆法伝授の段 〜京都 菅丞相の館〜築地の段二段目 道行詞の甘替 〜京都・大坂の道中〜安井汐待の段 〜摂津 安井の港〜杖折檻の段 〜河内・土師 覚寿の館〜東天紅の段三段目車曳の段 〜京都 吉田神社〜茶筅酒の段...
View Article文楽 8・9月東京公演『菅原伝授手習鑑』三段目〜五段目、『寿式三番叟』 国立劇場小劇場
例年9月東京公演は第一か第二土曜日が初日のところ、「さよなら公演」のためか、繰り上げて8月31日初日というイレギュラーなスケジュール。会期が通常より長めの設定となっている。...
View Article文楽 8・9月東京公演『曾根崎心中』 国立劇場小劇場
第三部、曾根崎心中。これが「御観劇料8,000円」なのは、いろいろな意味で、すごいッ。■ムラのない緊密性、かしらによる心理描写の表現力を感じる舞台だった。私の考える「上手い人形遣い」とは、かしらによる表現に秀でた人だ。かしらだけで彼や彼女の内面を表現し、物語の表現に深みを与えられる人。今回の『曾根崎心中』の主役二人、和生さん、玉男さんは、現代文楽においてかしらの表現に秀でた人の代表だと思う。...
View Article文楽祭『菅原伝授手習鑑』車曳の段、天地会・寺子屋の段 国立劇場小劇場
文楽座のファン感謝祭イベント、「文楽祭」へ行ってきました。■国立劇場や外部団体の主催ではなく、文楽座(技芸員さんの団体)自体が主催する手作りイベント。そのため、入場者へのパンフレット渡しや物販は技芸員さん自身がロビーへ出て対応。開演前や休憩時間中は、手が空いている技芸員さんがロビーに立っており、お話をしたり、サインをいただいたり、記念撮影をお願いすることができるという形態になっていた*1。よく見ると...
View Article文楽 10月地方公演『義経千本桜』椎の木の段、すしやの段『桂川連理柵』六角堂の段、帯屋の段、道行朧の桂川 神奈川県立青少年センター
今年の地方公演も景事がなくて嬉しいッ。(素直1)■昨年は平塚に吹き飛ばされた神奈川公演、今年はもとの神奈川県立青少年センター(桜木町)へ戻ってきた。昨年の平塚振替は会場に天井の耐震工事が入ったためだが、前がどんなのだったか忘れたので、変化はよくわからなかった。ホール自体の内装、設備が大きく変わったわけではないようだった。お囃子は今回も下手舞台袖に設置したパーテーションの中で演奏していた。以前は完全に...
View Article文楽 11月大阪公演『双蝶々曲輪日記』堀江相撲場の段、難波裏喧嘩の段、八幡里引窓の段、『面売り』 国立文楽劇場
今月のプログラムの技芸員インタビューは㊗️人間国宝認定🙌ということか、玉男さんだった。いわゆる「ろくろポーズ」を遊ばされていたが、手のひらが下向きすぎて、15kgクラスの超絶デカネコを膝の上に乗せて撫で回しながらインタビューに答えているようだった。マフィアのボスがふわふわの猫を撫でながら電話してるアレみたいで、良かった。第一部、双蝶々曲輪日記、堀江相撲場の段。直近の同演目上演、2021年9月東京公演...
View Article文楽 11月大阪公演『奥州安達原』朱雀堤の段、敷妙使者の段、矢の根の段、袖萩祭文の段、貞任物語の段 国立文楽劇場
第二部、奥州安達原、三段目。2022年9月東京公演で出たばかりの演目ながら、東京よりも、かなり良かった。明確によかったのは、人形の袖萩〈吉田和生〉、傔杖〈吉田玉也〉。役の性質を踏まえた芝居で、物語の世界観の強度が大幅に上昇していた。この二人のために、芝居の骨格ががっしりしたという印象。袖萩の特筆すべきポイントは、零落の令嬢としての姿と、母としての姿の描写の巧みさ。袖萩は、我が身を恥じてか、始終物怖じ...
View Article文楽 11月大阪公演『冥途の飛脚』淡路町の段、封印切の段、道行相合かご 国立文楽劇場
第三部、冥途の飛脚。この物語に登場する「丹波屋八右衛門」とは、どのような人物なのだろうか?現在では、八右衛門が茶屋の衆の前で語る鬢水入れの暴露は、「友情による忠兵衛を廓に出入りさせないようにするための行為」であり、八右衛門は「いい人」と理解されることが多いと思う。しかし、実は、昔の文楽のプログラムの解説や書籍では様相が異なっている。八右衛門のあの行動は、忠兵衛をバカにしたモラル的にアウトの行為と解釈...
View Article『双蝶々曲輪日記』十次兵衛の二重身分、帯刀について [文楽あいうえお]
ごくたまに、文楽鑑賞のための豆知識メモ「文楽あいうえお」をtwitterに投稿しています。twitterだとイラストで説明するコンテンツには便利なのですが、文章での説明が長いものは書けないので、テキスト主体の拡大版を、ブログに載せていこうと思います。...
View Article文楽 12月東京公演『源平布引滝』竹生島遊覧の段、九郎助住家の段/鑑賞教室公演『団子売』『傾城恋飛脚』新口村の段 シアター1010
今年の12月公演は北千住の劇場「シアター1010」(足立区芸術文化劇場)で開催。会場は、駅すぐ横の商業ビル(マルイ)の最上階に入っている。ビルの11階ゆえにエレベーター待ち等にかなり時間がかかるため、駅直結といっても結構早めに行かなくてはならないのがやや難点か。ビル外壁に掲示されているイメージキャラクターを見た方が「御器被り?」とおっしゃっているのが良かった。普段は一般演劇や、2.5次元舞台などが上...
View Article文楽 双蝶々曲輪日記 全段のあらすじと整理
2024年2月東京公演・第三部で上演される、『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)』の全段の内容について解説します。 ┃ INDEX┃概要┃舞台MAP┃時間経過┃登場人物┃あらすじ初段 浮瀬の居続けに合図の笛売り[大坂・天王寺浮瀬篇]二段目 相撲の花扇に意見の親骨[大坂・堀江相撲場篇]三段目 揚屋町の意気づくに小指の身がはり[大坂・新町遊郭篇]四段目...
View Article文楽 1月初春大阪公演『伽羅先代萩』竹の間の段、御殿の段、政岡忠義の段、床下の段 国立文楽劇場
◾️初春公演、第二部、伽羅先代萩。1月は、『先代萩』がいちばん良かった。これぞ文楽の誇る格調高き世界。63万石を誇る大藩の奥御殿、その洗練が舞台上にあらわれていた。政岡・和生さん、沖の井・勘彌さん、八汐・玉志さんという洗練された方が重要な役を担っていたことが大きいと思う。洗練は洗練でも、3人のタイプが分かれているのも、良かった。...
View Article文楽3月地方公演 三重県会場[津市久居アルスプラザ]様 展示企画にイラストを提供しました
文楽3月地方公演 三重県会場・津市久居アルスプラザ様の展示企画 『あなたのしらない文楽の世界』...
View Article文楽 『木下蔭狭間合戦』竹中砦の段 まつもと市民芸術館
『木下蔭狭間合戦(このしたかげはざまがっせん)』の松本公演へ行った。地方自治体の独立した自主企画公演だが、文楽座としては、3年前にロームシアター京都の企画で復活された同演目の再演という体裁になっている。これは、京都公演の際のプロデューサー的立場だった木ノ下裕一氏が会場「まつもと市民芸術館」の芸術監督に今春就任予定という縁での企画だと思われる。このホールで文楽が上演されるのは、20年ほど前の開場以来、...
View Articleせとだ文楽 『二人三番叟』『傾城阿波の鳴門』巡礼歌の段 ベル・カントホール
広島県の生口島で行われた「せとだ文楽」へ行ってきた。生口島は、瀬戸内海の中ほどに浮かぶ大きな島。広島県に属し、本州(広島県尾道市)四国(愛媛県今治市)をつなぐ「しまなみ海道」上に所在している。東京からは新幹線でも飛行機でも、およそ5時間ほどかかる場所だ。なんで生口島?場所が唐突すぎんか??と思われる方も多いだろう。実はこれ、錣太夫さんの地元凱旋公演なのだ。これがもう本当に……、いままでに行った文楽公...
View Article文楽 3月地方公演『義経千本桜』椎の木の段、すしやの段 府中の森芸術劇場
権太は、悪から善へと変じた人物なのだろうか?私は当初、権太をそのように理解していた。前半は「実は小心者のゴロツキ」、後半は「親想いの善人」であるという解釈が正しいと。その転換点が「椎の木の段」の一度目の引っ込みと二度目の出のあいだ、あるいは「椎の木の段」と「すしやの段」のあいだにあると思っていて、その転換点をみるのが「高等な見方」だと思っていた。しかし、文楽をしばらく観続け、さまざまな浄瑠璃を読むう...
View Article映画へ〈改作〉される古典芸能:『妖刀物語 花の吉原百人斬り』 1 歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒』からの改変点
映画『妖刀物語 花の吉原百人斬り』がアマプラの東映オンデマンドで配信開始されているのを見つけた。『妖刀物語 花の吉原百人斬り』監督 内田吐夢脚本 依田義賢制作・配給 東映公開 1960年9月VHSあり/Amazon...
View Article文楽 『和田合戦女舞鶴』全段のあらすじと整理
2024年4月大阪公演、5月東京公演で上演される『和田合戦女舞鶴』の全段の解説です。公演では断片的な上演となり、内容がわかりづらくなるため、全体を通した内容を紹介します。 contents┃ 概要理法権女性主人公・板額門破り┃ 登場人物┃ あらすじ初段大序...
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